
阪神淡路大震災をきっかけに土木の道を歩み始めたdobokuyaさん。施工管理から建設コンサルタント、そして発注者支援業務と、土木業界の中で様々な経験を積み重ねてきた。施工管理の現場で叩き上げられたその経験は、今や発注者側の立場でも大きな力となっている。
現場のリアルな苦労話から、土木技術の素晴らしさ、そしてこの仕事で得られるやりがいまで、dobokuyaさんの思いが詰まったインタビューだ。施工管理の仕事に誇りを持つ人にも、これからの道を考えている人にも、きっと響く内容になってるぞ。
Q.簡単に自己紹介をお願いできますか?
私はdobokuyaと申します。年齢は48歳です。大学卒業後、地元の施工管理会社に就職しました。
道路、河川を主とした土木工事の施工管理の仕事に6年間従事した後、建設コンサルタントの会社に転職し、主に国土交通省における土木工事の発注者支援業務に15年程度携わっております。
現在は建設コンサルタント会社を退職し、個人事業主として県土木事務所の発注者支援業務に従事しております。
- 2015年4月地元施工管理会社に入社現場技術員、現場代理人として主に道路、河川工事に従事
- 2006年10月建設コンサルタント会社に転職国土交通省発注の発注者支援業務(港湾・道路・河川)に従事
- 2022年4月建設コンサルタント会社を退職個人事業主として大分県土木事務所の発注者支援業務に従事~現在に至る
Q.新卒で施工管理のお仕事を選ばれたのは、どんな理由からですか?
学生当時の私は自分の進路についてあまり真面目に考えておらず、とりあえず大学に進学し、どこか安定した企業に就職できればよいといった漠然とした気持ちしか持っておりませんでした。
そんな中、震度7を記録した兵庫県を中心とする阪神淡路大震災が発生します。当時私が住んでいた四国地方でも震度5強の地震が起こりましたが、周囲で大した被害はありませんでした。
しかし、その日のニュースに映った兵庫県の様子は、まるで違う世界を見ているようでした。街が火の海に包まれ、淡々と死者が増えていくニュースを呆然と眺めていたことを今でも覚えています。
当時の私にとっては非常にショックの大きい出来事でしたが、さらに驚かされたのがその復興の速さです。電気や水道などの都市インフラは数日のうちに復旧し、瓦礫の山と化した街並みも1年経たないうちにかなり復興していました。
私は他国では真似することができない日本の高い土木技術力、災害に屈することのない技術者達の信念に感銘を受け、自分も将来こういった仕事に携わってみたい、と思うようになり、土木業界を目指すこととなりました。
Q.具体的にどのようなプロジェクトや業務を担当していましたか?
私の担当は主に道路、河川工事の現場監督です。元請会社として、現場の工程、品質、安全管理などの役割を担い、作業が遅滞なく進められるよう下請け会社との調整等を行いました。こういうと聞こえはいいですが、最初の数年はただ上司や先輩の言うことに従うばかりで、現場で右往左往しておりました。
ベテランの重機のオペレーターや大工さん達に怒鳴られながら、必死に丁張を入れていたのを覚えています。
日々の仕事内容は、朝7時半出社、8時朝礼~17時まで現場仕事、現場が終わり次第現場事務所で書類整理や翌日の作業準備などを行っておりました。
今と違い当時は週休2日といった考えはなく、休日出勤や残業が当然のようにありました。ただ、それはどこの土木会社も同じようなもので、私も特に不満を感じることもなく仕事をしておりました。
Q.施工管理のお仕事で、一番楽しかったこと、やりがいを感じた瞬間は?
この仕事で一番のやりがいを感じるところは、道路や橋などの構造物を自分たちの手でつくりあげ、それが多くの人たちに利用されることです。
今まで人が立ち入っていないところに道をつくる時などは、周りに何もない山奥に何日も泊り込んだり、道が崩壊して現場から帰れなくなったり、測量しているとすぐ近くにイノシシが出没し、慌てて逃げだしたことがあったりと色々大変な目にもあいました。
難工事で苦労することも多々ありましたが、なんとか期間内に工事を終え、無事に開通できた時は達成感で満たされました。発注者や利用者からも感謝の言葉をいただき、この仕事をやっていてよかったと感じることができました。
Q.施工管理から転職を考えたきっかけは、どんなことでしたか?
若いころは目の前にある仕事を必死にこなして、うまくいけば達成感を感じ、失敗は反省し、次に活かそうと頑張るだけでなんとかなりました。色々な工事を経験し、資格を取得していくことで自分が成長できていることを実感し、充実した日々を過ごせていました。
しかし、年月を重ねて自分が現場代理人をする立場になったとき、今までのように現場のことだけを考えればよい、というわけにはいかなくなりました。発注者との協議や会社への現場の進捗報告、予算の管理など、責任のある仕事も増えました。
さらに、バブル経済崩壊によるあおりが建設業界にも広がっている時期でもあり、経営が立ちいかなくなり倒産する会社も周囲に増えてきていました。自分の現場管理がうまくいかないと会社の経営に悪影響を与えるのではないか、工事が止まると下請け会社が倒産してしまうのではないか、そういったプレッシャーを感じるようになり、今までやりがいを感じていた仕事も辛くなっていきました。
このままでは自分の体が持たない、肉体的にも精神的にも限界であると感じ、退職を決意しました。
Q.現在のお仕事は、どのような内容ですか?施工管理の経験は、今のお仕事にどう活きていますか?
現在私は国や県が発注者である、発注者支援業務に携わっています。
発注者支援業務とは、発注者が公共工事の発注時に行う業務や、工事発注後の現場監督業務などを発注機関の職員に代わり行う業務です。
つまり、立場上は発注者と同じ側で業務を行うこととなります。ここが通常の施工管理会社やコンサルタントと大きく違うところです。
この業務は発注者を支援(サポート)する、という名前から主体性のないように聞こえるかもしれませんが、実際は違います。発注者支援業務は、業務量が多く発注者の担当職員の負担が増えたことから、それを軽減しようと生まれた業務です。現場の知識や経験、書類作成のノウハウを活用し、業務を遂行する能力が必要です。
また、立場上は発注者と同じであっても実際は民間企業の人間であり、中立公平性が求められます。従って業務を円滑に行うためには発注者、施工業者とコミュニケーションをとり、良好な関係を築くことが必要です。私の場合、施工管理会社で培った経験や知識がこの業務を遂行する大きな助けとなりました。
Q.現役で頑張っている施工管理の皆さんに、何かアドバイスはありますか?
最近は建設現場にも36協定や週休2日制の考えが広がり、施工管理の仕事も以前よりは待遇が改善されているようですが、相変わらず責任の重い、大変な仕事だと思います。
仕事で行き詰ったときや悩みがある場合は、一人で考え込まず会社の同僚や上司、発注者の担当に相談することを勧めます。
特に我々発注者支援業務の人間は工事を円滑に進めることを目的としていますから、遠慮せずに頼っていただければと思います。
また、今後施工管理の仕事を続けていくうえで助言したいことがあります。継続的な自己研鑽です。具体的には自身のスキルアップのために講習を受ける、業務に必要な資格試験を取得することなどをお勧めします。
自らの成長の糧になることはもちろんですが、自身の発言に説得力が増し、周囲の人間や発注者の信頼を得ることに繋がるからです。もちろん給与面の待遇も期待できます。

dobokuyaさんの話を読んで、俺も改めて施工管理の仕事の重みと魅力を感じたよ。震災から復興を目の当たりにして土木業界を志したというエピソードには、同じ土木に携わる者として共感する部分が多かった。現場での苦労やイノシシとの遭遇なんて話もリアルだし、施工管理の現場がどれだけ過酷で面白いかが伝わってくる。
一方で、現場代理人としての責任の重さや、倒産リスクまで考えざるを得なかった時期の話には、当時の厳しい状況がよく分かる。俺自身も「現場を止めるな」というプレッシャーを日々感じているから、dobokuyaさんの葛藤には共感せずにいられない。
今は発注者支援業務に従事しているとのことだけど、施工管理の経験が新たな仕事に活きているのはやっぱり頼もしいし、励みになるよね。最後のアドバイスも説得力がある。俺もこれからはもっと資格取得やスキルアップに力を入れて、信頼される施工管理者を目指そうと思ったよ。