現場監督14年がデベロッパーに転じた理由。「なぜここに建てるのか」を知りたかった

わたしの履歴書
源さん
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今回は中堅ゼネコンで14年間建築施工管理をやってきて、大手マンションデベロッパーの施工監理部門に転職した宮本大樹さん(38歳)に話を聞いてきたぞ。
「なぜここに建てるのか」という問いが頭から離れなくなった日のことを、大樹さんは今でも鮮明に覚えているという。現場を動かす側から、建物を企画する側へ。その決断の裏側を聞いてくれ。

わたしの履歴書
  • 24歳
    中堅ゼネコンに新卒入社・建築施工管理部門へ配属
    都内の中規模マンション工事からキャリアをスタート。工程・品質・安全・原価管理の基礎を現場で習得する。
  • 30代前半
    現場責任者として複数の協力会社を統括
    分譲マンション・商業施設・オフィスビルなど幅広い建築現場を経験。100人規模の現場も担当するようになる。
  • 38歳
    大手マンションデベロッパーの施工監理部門に転職
    「なぜここに建てるのか」という問いへの答えを求めて転職を決意。発注者側の施工監理ポジションに就く。

自己紹介。中堅ゼネコン14年の現場監督がデベロッパーに転じるまで

今回話を聞かせてもらったのは、現在38歳の宮本大樹さんだ。大学で建築を専攻し、卒業後は中堅ゼネコンに新卒入社。分譲マンション・商業施設・オフィスビルと幅広い建築現場を14年間経験してきた。30代に入ってからは現場責任者として複数の協力会社を統括し、100人規模の現場を任される立場になっていた。

1級建築施工管理技士を持ち、現場代理人として工事全体を一手に引き受けてきた。「施工管理の仕事は好きでした。現場が動いていく過程が見えて、竣工したときの達成感は今でも忘れられない」と大樹さんは言う。転職したのは年収への不満でも残業への限界でもなかった。14年間現場を真剣にやってきた人間だからこそ生まれた問いが、転職の出発点だったんだよな。

現在はデベロッパーの施工監理部門で、施工会社への発注・工程管理・品質確認・コスト管理を担当して2年目。「発注者側に来て初めて見えてきたものがある」と話してくれた。

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転職のきっかけ。「なぜここに建てるのか」という問いが止まらなくなった

源さん
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転職を考え始めたのはどんなタイミングでしたか?

大樹さん
大樹さん

36歳のとき、都内の大型マンション工事の現場責任者をやっていました。竣工後にそのマンションが完売したと聞いたんですが、自分はそこにマンションを建てることになった理由を、何一つ知らないまま作っていた。なぜその立地なのか、どんな人が住むことを想定しているのか、なぜその間取りなのか。図面通りに作ることへの疑問じゃなくて、「自分はいったい何を作っているんだろう」という感覚が生まれたんです。

源さん
源さん

その感覚はその現場だけだったんですか?

大樹さん
大樹さん

違いました。次の現場でも同じ感覚が来た。施工管理の技術的な自信はあった。でもその技術が、なぜここに・なぜこの形で使われているのかを、自分は何も知らないと気づいたとき、少し怖くなりました。このまま同じことを繰り返していいのかという気持ちが、だんだん大きくなっていきました。

源さん
源さん

「上流に行きたい」という方向性はすぐ固まりましたか?

大樹さん
大樹さん

固まるまでに1年近くかかりました。デベロッパーなのか建設コンサルタントなのか発注者支援業務なのか、「上流」という言葉の中身が自分でも曖昧だったんです。転機になったのは、知人のデベロッパー社員と話す機会があったときでした。その人が用地を見に行ったときの話をしてくれて、なぜその土地にマンションを建てるか・どんな世帯をターゲットにしているか・10年後の街の姿をどう描いているかという話を聞いて、自分が欲しかったのはこれだと思いました。

源さん
源さん

その話を聞いて、何かが変わりましたか?

大樹さん
大樹さん

動く覚悟が決まりました。図面通りに作ることより、なぜここに建てるのかを考える側に立ちたかった。それが自分の転職の核心だと分かったんです。

「図面通りに作ることへの疑問」ではなく「なぜここに建てるのかを知りたい」という動機は、14年間現場を真剣にやってきた人間だからこそ生まれる問いだと思うぞ。発注者サイドにいる俺から見ると、施工管理出身者がデベロッパーに来たとき、現場への不満ではなく「上流から関わりたい」という前向きな動機を持っている人間は、入社後に確実に活躍しているんだよな。「作る技術を持っている人間が、作る理由を考える側に回る。」それが大樹さんの転職の本質だったぞ。

転職活動。現場監督の経験はデベロッパーに通用するのか不安だった

源さん
源さん

転職活動を始めたとき、不安はありましたか?

大樹さん
大樹さん

正直、かなりありました。デベロッパーって、MBAを持っているような人間や不動産の知識がある人間が多いイメージがあって。施工管理しかやってきていない自分が、どう評価されるのか全然わからなかったんです。

源さん
源さん

実際に転職活動を始めてみてどうでしたか?

大樹さん
大樹さん

建設業界に詳しいエージェントに相談したら、「デベロッパーの施工監理部門は施工管理経験者を特に求めている」と言われて驚きました。施工会社の言っていることが現場レベルで理解できる人間は、発注者側では希少だということを、そのとき初めて知ったんです。

源さん
源さん

面接ではどんなことを聞かれましたか?

大樹さん
大樹さん

「なぜ施工管理からデベロッパーに来たいのか」という質問が一番重かったです。「残業が多いから」とか「年収を上げたいから」という答えでは通らない。「現場を知っているからこそ、上流の判断に関わりたい」という自分の動機を、具体的なエピソードで話せるかどうかが勝負だったと思います。

源さん
源さん

準備で一番力を入れたことは何ですか?

大樹さん
大樹さん

14年間の経験を言語化することです。「10年間現場をやってきました」では伝わらない。「延床面積○万㎡規模の現場で複数の協力会社を統括し、工期遅延をどう立て直したか」という形で具体的に話せるよう準備しました。エージェントに何度も模擬面接をしてもらって、自分の経験がどう評価されるかを確認しながら磨いていきました。

「施工管理経験者がデベロッパーの施工監理部門で評価される」という話は、発注者サイドにいた俺の実感とも一致するぞ。施工会社が提出する施工計画書・工程表・品質管理計画書を見たとき、「この工程は現実的か」「このコストは適正か」を即座に判断できる人間は、現場経験なしには育たないんだよな。大樹さんが転職活動で感じた「自分の経験は通用するのか」という不安は、実態とは逆だったぞ。

デベロッパーの施工監理部門の仕事の実態。ゼネコンの施工管理と何が違うのか

源さん
源さん

デベロッパーの施工監理部門では、実際にどんな仕事をしているんですか?ゼネコンの施工管理と比べて、何が一番違いますか?

大樹さん
大樹さん

一番の違いは立場です。ゼネコンの施工管理は受注者として工事を完成させる仕事。デベロッパーの施工監理は発注者として施工会社に工事を任せて管理する仕事。自分が現場を動かすのではなく、施工会社が正しく動いているかを確認して判断する立場になります。

源さん
源さん

具体的にどんな業務が中心になりますか?

大樹さん
大樹さん

施工会社への発注・施工計画書の確認・定期的な現場確認・工程管理・品質検査への立会い・設計変更の協議・コスト管理が中心です。毎日現場にいるわけじゃなくて、週に数回の現場確認とオフィスでの書類確認・協議が仕事の軸になります。

源さん
源さん

現場に毎日いない、というのはゼネコン時代と感覚が変わりましたか?

大樹さん
大樹さん

最初は少し寂しかったです。ゼネコン時代は毎日現場にいて、コンクリートが打たれる瞬間や構造物が形になっていく過程をリアルタイムで見ていた。デベロッパー側では現場確認のときに「ここまで進んでいるんだ」と確認する形になる。達成感の種類が変わりました。ただ「なぜここに建てるのか」を知りながら工事を見ている感覚は、ゼネコン時代とはまったく違うやりがいがあります。

「達成感の種類が変わった」という言葉は、発注者側に転向した施工管理経験者が共通して言うことだぞ。毎日現場で感じる手触りのある達成感から、プロジェクト全体を俯瞰して動かす達成感へ。どちらが良いかは人それぞれだが、「現場の熱量が好きで毎日現場に立ちたい」という人間には物足りなさを感じる可能性があるぞ。一方で「全体を見渡す仕事がしたい」という人間には、デベロッパーの施工監理は非常に相性が良いんだよな。

発注者側に来て初めて分かったこと。施工管理の経験がこれほど使えるとは思わなかった

源さん
源さん

デベロッパーに入って、最初に驚いたことはありましたか?

大樹さん
大樹さん

施工会社との打ち合わせに初めて出たときです。施工会社が設計変更の提案を持ってきて、それが妥当かどうかを発注者側で判断しなければいけない場面があった。社内の他のメンバーが書類を見ながら困っている中で、自分は現場でこの状況を何十回も経験していたので、即座に「この変更は工程に影響する・しない」が分かった。「ああ、自分の経験ってここで使えるんだ」と初めて実感した瞬間でした。

源さん
源さん

施工管理の経験が活きると感じる場面は他にもありますか?

大樹さん
大樹さん

施工会社との関係構築が早かったです。現場の言葉で話せるので、施工会社の担当者が「この人は分かっている」と早めに信頼してくれる。問題が起きたときに早めに相談してもらえるようになると、工事全体がスムーズに進むんです。現場経験がない発注者担当者だと、施工会社が「言っても分からないだろう」と判断して相談を後回しにするケースがあると聞きます。

源さん
源さん

逆に、入ってから一から学んだことはありましたか?

大樹さん
大樹さん

事業の収支感覚です。用地取得コスト・建設コスト・販売価格・利益率という数字の見方は、施工管理では全く触れてこなかった。発注者として予算を管理する立場になると、「この工事でこれだけのコストがかかることが事業全体にどう影響するか」という視点が必要になる。最初の1年はこの感覚を身につけるのに必死でした。

源さん
源さん

「なぜここに建てるのか」という問いへの答えは、入社後に見えてきましたか?

大樹さん
大樹さん

見えてきました。用地を検討する会議に入れてもらったとき、街の動向・人口動態・交通アクセス・競合物件の状況を分析しながら「なぜここに建てるか」を議論している場面に立ち会えた。現場でただ図面通りに作っていたときには見えていなかった景色が、発注者側に来てようやく見えた感じがしました。

「施工管理の経験が通用した部分」と「一から学んだ部分」が両方あるという話は、発注者サイドに転向した施工管理経験者が共通して言うことだぞ。現場の技術的な判断力は即座に武器になるが、事業収支の感覚は発注者側に来てから積み上げていくものだよな。この両方を理解した上で転向を決めた人間が、入社後にギャップを感じにくいぞ。施工管理の経験は発注者側で武器になる。ただし「使える武器」と「新たに習得する感覚」が両方あることを知っておくことが大事だぞ。

現場監督からデベロッパーへの転向が向いている人・向いていない人

源さん
源さん

大樹さんから見て、現場監督からデベロッパーへの転向が向いている人間の条件を教えてもらえますか?

大樹さん
大樹さん

3つあると思っています。「なぜここに建てるのかを知りたい」という問いを持っている人間、現場を離れた仕事でもやりがいを見つけられる人間、施工管理の経験を武器として言語化できる人間です。この3つが揃っていると、転職活動でも入社後でも強いと思います。

源さん
源さん

逆に向いていない人間はどんなタイプですか?

大樹さん
大樹さん

毎日現場に出て職人と一緒に動くことにやりがいを感じている人間は、デベロッパーの発注者側の仕事に物足りなさを感じるかもしれない。あとは「残業が嫌だから」「年収を上げたいから」という動機だけで来ると、面接でも弾かれるし、入ってからもミスマッチが起きやすいと思います。

源さん
源さん

働き方の変化はどうでしたか?

大樹さん
大樹さん

残業はゼネコン時代より減りました。繁忙期もありますが、プロジェクトの節目に集中する形で、「突然忙しくなる」という感覚は少なくなった。土日に現場の心配で頭が一杯になることがなくなったのは、生活の質として大きな変化でした。年収はゼネコン時代と同水準を維持できています。

「毎日現場に出て職人と一緒に動くことにやりがいを感じている」人間には向いていないという話は正直な言葉だと思うぞ。発注者サイドにいる俺の経験から見ても、施工管理からデベロッパーに転向して早期離職するケースの多くは、この部分のミスマッチが原因だよな。「現場の熱量が好きか」「全体を動かすことが好きか」という自分の軸を先に整理してから転向を検討してほしいぞ。

現場監督からデベロッパーへの転職を考えている人間に伝えたいこと

源さん
源さん

最後に、同じ転職を考えている現場監督に伝えたいことを聞かせてください。

大樹さん
大樹さん

「なぜデベロッパーに行きたいのか」を、ちゃんと自分の言葉で言えるようにしてから動いてほしいです。「残業を減らしたい」「年収を上げたい」では面接を通らない。「現場を知っているからこそ、上流から関わりたい」という動機が本音として言える人間が、転職後にも活躍できると思います。

源さん
源さん

転職のタイミングについては、何か思うことはありますか?

大樹さん
大樹さん

自分は38歳での転職でしたが、もう少し早く動いてもよかったかもしれないとは思っています。ただ「早く動けばよかった」よりも「動いたことが大事だった」という気持ちの方が強い。現場監督の経験は、発注者側で確実に活きます。その確信を持てたのは、実際に動いてからでした。

源さん
源さん

転職活動で使ったエージェントについて、何かアドバイスはありますか?

大樹さん
大樹さん

建設業界に特化したエージェントを使ったことが、転職活動の質を上げてくれました。デベロッパーの施工監理部門がどんな人材を求めているか・自分の経験がどう評価されるかを具体的に教えてもらえた。転職すると決めてから動くんじゃなくて、まず相談して選択肢を知ることから始めるのが正解だったと思っています。

大樹さんの話で一番印象に残ったのは、転職の動機が「逃げ」でも「現場への不満」でもなかったことだぞ。「なぜここに建てるのかを考える側に立ちたかった」という前向きな引力で動いた人間だからこそ、発注者側に来てから施工管理の経験を武器として使いこなせているんだよな。現場監督からデベロッパーへの転職を考えているなら、まず「自分はなぜ上流に行きたいのか」という問いに向き合うことから始めてほしいぞ。

まとめ

宮本大樹さんの話を通じて伝えたいのは、「現場監督の経験はデベロッパーの施工監理部門で確実に武器になる」という事実だぞ。施工会社の言葉が分かること・工程の妥当性を即座に判断できること・多方面との折衝経験、これらはすべて発注者側で直結する能力だよな。施工会社との信頼関係が早く築けること・問題が起きたときに早めに相談してもらえることは、工事全体の品質と工期に直接影響するぞ。

一方で事業収支の感覚・用地評価の視点・発注者として予算を管理する意識は、デベロッパーに来てから積み上げていくものだぞ。「現場監督の経験があれば全部通用する」という期待で入ると、ギャップを感じる部分が出てくるんだよな。「使える武器」と「新たに習得するもの」の両方を理解した上で転向を決めた人間が、入社後の満足度が高いぞ。

「図面通りに作ることより、なぜここに建てるのかを考える側に立ちたかった」という大樹さんの言葉が、このキャリアチェンジの本質を表しているぞ。その動機を持って転向を決めた人間は、発注者側で新しい景色を見つけることができるんだよな。現場監督からデベロッパーへの転職をより深く考えたいなら、現場監督が次に狙うべきおすすめの転職先をデベロッパーの立場から話すぞも参考にしてくれ。