ゼネコン12年の施工管理が35歳で派遣に転向した話

わたしの履歴書
源さん
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「派遣に転向した」というと、まわりからどう見られるか気になる人は多いと思う。正社員を辞めて派遣になるって、施工管理の世界ではまだ「一歩引いた選択」というイメージが根強い。今回は、中堅ゼネコンで12年間正社員として施工管理をやってきて、35歳で派遣に転向した須藤さんに話を聞いてきたぞ。年収がどう変わったか、現場での扱いはどう違うか、不安はなかったのか。全部正直に話してもらったから、派遣という選択肢を考えている人はぜひ参考にしてくれ。

自己紹介:ゼネコン12年の正社員施工管理が、35歳で派遣に転向した理由

今回話を聞かせてもらったのは、現在38歳の須藤さんだ。大学で建築を学んで新卒で中堅ゼネコンに入社し、12年間建築施工管理として正社員で働いてきた。マンションや商業施設の新築工事を中心に、現場代理人も経験してきた人間だ。1級建築施工管理技士の資格も持っている。

「ゼネコンでの仕事自体は嫌いじゃなかったんです。現場が好きだったし、やりがいもあった。ただ、会社の方針で遠方現場への長期出張が続くようになって、家族との時間が限界まで削られていった。そこが一番のきっかけでした」と須藤さんは振り返る。妻と子供2人(小学生と保育園児)がいて、住宅ローンも残っている。「このまま正社員でいるべきか」という問いと、「家族との時間をどう確保するか」という問いが、35歳のときに重なった。

現在は派遣で建築施工管理として稼働して3年目。自宅から1時間圏内の現場を選んで働いており、派遣転向後に時給交渉を経て現在の単価に落ち着いている。「逃げで選んだよなけじゃない」という言葉が、話を聞いている間ずっと伝わってきたぞ。

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転向のきっかけ:単身赴任3年目、子供の運動会に一度も行けなかった年

源さん
源さん

派遣への転向を考え始めたのは、どんなタイミングだったんですか?

須藤さん
須藤さん

単身赴任が3年続いたんです。最初の1年は「仕方ない」と思っていました。2年目も何とか乗り越えた。でも3年目に、子供の運動会に一度も行けなかった年があって。上の子が小学校に入学した年だったんですが、入学式にも運動会にも行けなかった。妻から写真が送られてきて、それを現場の宿舎で一人で見ていたとき、「このままでいいのか」と本気で思いました。

源さん
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会社に相談することは考えませんでしたか?

須藤さん
須藤さん

しました。でも「今の現場が終わったら考える」という返事が続いて、結局変わらなかった。会社としては現場を回すことが優先で、個人の家庭事情は後回しになりやすい。それ自体を責めるつもりはないですが、「会社が変わってくれるのを待つ」という選択肢は、自分には合わないと判断しました。

源さん
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派遣という選択肢はどうやって出てきたんですか?

須藤さん
須藤さん

最初は正社員のまま転職を考えていました。でも転職先でまた同じことが起きるリスクがある。「勤務地を自分でコントロールできる働き方はないか」と調べていたときに、派遣施工管理という選択肢が出てきたんです。案件を選べる、自宅から近い現場を指定できる、という構造が自分の状況にはまった感じがしました。

「子供の運動会に一度も行けなかった」という話は、現場の施工管理をやってきた人間なら、身に覚えがある感覚だと思う。家族のために稼いでいるはずが、家族との時間がなくなっていく。その矛盾に35歳で正面から向き合って、動けたのは早い判断だったと俺は思うぞ。

「派遣=負け」だと思っていた自分が、考えを変えた瞬間

源さん
源さん

実際に派遣への転向を決めるとき、抵抗感はありましたか?

須藤さん
須藤さん

正直、最初はありました。12年間正社員でやってきて、「派遣になる」というのは自分の中で「格下げ」のイメージがあった。ゼネコンの同僚に知られたくないという気持ちもあったし、妻にも最初は言いにくかったです。

源さん
源さん

その考えが変わったのはどんなきっかけでしたか?

須藤さん
須藤さん

派遣会社に登録して、担当者と話したときです。「須藤さんの経験と資格なら、案件は選べますよ」と言われて。最初の提示時給が2,800円だったんですが、「1級資格と12年の経験があるなら交渉できますか」と聞いたら、3,500円まで上げてもらえた。その瞬間に「あ、こっちが選ぶ立場なんだ」と感覚が変わりました。

源さん
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妻の反応はどうでしたか?

須藤さん
須藤さん

最初は「派遣って大丈夫なの?」という反応でした。ボーナスがなくなることへの不安が一番大きかったです。ただ「自宅から1時間以内の現場だけ選べる」「サービス残業がなくなる」という話をしたら、「それなら試してみてもいいかも」という話になりました。数字で説明できたことが大きかったと思います。

「こっちが選ぶ立場」という感覚の変化は、派遣施工管理の構造を理解した人間が必ず通る瞬間だと思う。正社員は会社が現場を決める。派遣は自分で案件を選べる。この違いが、1級資格と12年の経験がある人間にとって、どれだけ大きい話かは、やってみないと分からないんだよな。

派遣に転向して、年収と手取りは実際どう変わったか

源さん
源さん

実際に転向して、年収はどう変わりましたか?

須藤さん
須藤さん

正社員のときの年収はボーナス込みで約650万円でした。派遣に転向して、時給3,500円・月160時間稼働だと月収56万円、年収換算で約670万円になります。数字だけ見ると上がっているように見えますが、ボーナスがない分、トータルの手取りで比較すると正社員時代とほぼ同水準という感じです。

源さん
源さん

ボーナスがなくなったことへの影響はありましたか?

須藤さん
須藤さん

夏と冬の支出の感覚が変わりましたね。以前はボーナスが入るタイミングで住宅ローンの繰り上げ返済をしていたんですが、それができなくなった。毎月の手取りは安定しているんですが、「まとまったお金が入ってくる」という感覚がなくなって、妻には最初しんどいと言われました。今は月々の管理に切り替えて慣れましたが、ここは正直デメリットだと思っています。

源さん
源さん

サービス残業がなくなった影響はありましたか?

須藤さん
須藤さん

これが一番大きかったかもしれません。正社員のときは月30〜40時間のサービス残業が当たり前でした。派遣は契約外の労働をさせにくい構造なので、残業が出た分はちゃんと時給で払われる。時給換算で考えると、正社員時代より実質的な時間単価は上がっています。「年収の数字」より「時間あたりの収入」で比較すると、派遣のほうが自分には合っていると感じています。

「年収の数字」と「時間あたりの収入」は別の話だ。サービス残業が月40時間あった人間が派遣に転向すると、年収の数字が同じでも実質的な時給は上がる。この計算を自分でできるかどうかが、派遣という働き方を使いこなせるかどうかの分かれ目になるぞ。

正社員と派遣、現場での扱いのリアルな違い

源さん
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現場での扱いは、正社員のときと違いを感じますか?

須藤さん
須藤さん

最初の現場では、やっぱり「派遣さん」という空気を感じる場面がありました。朝礼の後に元請けの正社員同士で情報共有があって、自分だけ後から聞かされる、というケースが何度かあった。悪意があるわけじゃないと思うんですが、「輪の中に最初から入っていない」という感覚は正直ありましたね。

源さん
源さん

それはその後も続きましたか?

須藤さん
須藤さん

1ヶ月もすると変わりました。結局「仕事ができるかどうか」で現場の空気は変わる。図面を読んで的確な指摘ができる、工程の無理を事前に見抜ける、職人さんとの調整が早い。そういう場面を重ねていくと、「派遣さん」じゃなくて「須藤さん」と呼ばれるようになる。肩書きより仕事の質で評価される、というのは現場の文化として変わらないと思っています。

源さん
源さん

逆に、正社員のときより楽になった部分はありますか?

須藤さん
須藤さん

社内の人間関係から解放されたのは大きいです。正社員のときは、現場の仕事以外に社内の調整や上司への報告、会議への出席など、現場と関係ない仕事が多かった。派遣は「現場の仕事に集中できる」という構造なので、余計なストレスが減りました。現場が好きで施工管理に入った人間には、むしろ向いている働き方だと思っています。

「派遣さん」から「須藤さん」に変わる瞬間の話は、発注者サイドにいた俺にも実感がある。現場では結局、肩書きより「この人は信頼できるか」で評価が決まる。派遣だから下に見られる、というのは最初の1〜2週間の話で、その後は仕事の質がそのまま立場になっていく。それはどの現場でも変わらないんだよな。

案件の選び方と「次の現場どうする」不安との向き合い方

源さん
源さん

案件はどんな条件で選んでいますか?

須藤さん
須藤さん

絶対に外せない条件が2つあります。自宅から1時間以内であること、日勤のみであること。この2つを最初に派遣会社に伝えておくと、それに合わない案件は最初から候補に上がってこない。正社員のときは「会社が決めた現場に行く」しかなかったので、この構造の違いは本当に大きいです。

源さん
源さん

条件に合わない案件を断ることはできますか?

須藤さん
須藤さん

断れます。最初は「断っていいのか」と思っていましたが、1級資格と経験がある人間は派遣会社にとっても大事な人材なので、無理に押し込んでくることはなかった。ただ断り続けると次の案件紹介が遅くなるリスクはあるので、「この条件なら受けられる」という基準を明確に伝えておくことが大事です。

源さん
源さん

「次の現場どうする」という不安はありますか?

須藤さん
須藤さん

あります。正直に言うと、これが派遣の一番のストレスです。現場の終わりが見えてくると「次が決まるかどうか」という不安が出てくる。ただ、3年やってみて感じるのは「1級資格があって経験が長い人間は、次が決まらないケースはほぼない」ということです。今のところ現場と現場の間が空いたことは一度もない。ただそれは「次が来るはずだ」という慢心にならないように、常に派遣会社との関係を丁寧に作っておくことが前提だと思っています。

「次の現場どうする」という不安は、派遣を選んだ人間全員が持つ感覚だと思う。ただ須藤さんが言っているように、1級資格と10年超の経験がある施工管理の需要は、今の市場では相当高い。「空白期間が怖い」と思うなら、まず派遣会社に登録して「自分の経験だと次がどのくらいのスピードで決まるか」を聞いてみるのが一番早い。情報を持っていると、不安の質が変わるぞ。

派遣3年目で見えてきた、正社員では気づけなかった施工管理市場の実態

源さん
源さん

派遣に転向して3年経って、正社員のときには見えなかったものが見えてきた部分はありますか?

須藤さん
須藤さん

「自分の市場価値」が初めて分かりました。正社員のときは会社の中の評価しか見えていなかった。派遣に転向して、複数の現場を経験して、「1級資格と12年の経験は市場でこれだけの価値がある」というのが数字で見えた。正社員のときは資格手当が月1万円だったんですが、派遣に転向したら時給換算で数倍の評価になった。この差は、正社員のままだと一生気づけなかったと思います。

源さん
源さん

複数の現場を経験することで、見えてきたものはありますか?

須藤さん
須藤さん

会社によって現場の文化がこんなに違うのか、と驚きました。正社員のときは一つの会社の文化しか知らなかった。派遣で複数の現場を経験すると、「この会社の安全管理は丁寧だな」「この元請けは書類の要求が多いな」という比較ができるようになる。自分の施工管理の引き出しが明らかに増えました。

源さん
源さん

逆に、派遣を続ける中で「ここは正社員のほうがよかった」と感じる部分はありますか?

須藤さん
須藤さん

退職金がないこと、昇給の概念がないことは割り切っています。ただ「会社への帰属意識」みたいなものがなくなったのは、良くも悪くも、という感じです。正社員のときは「この会社をよくしたい」という気持ちが多少はあった。派遣はあくまで「現場の仕事に集中する」という立場なので、会社への愛着みたいなものは薄れました。それが寂しいかどうかは人によると思います。

「自分の市場価値が初めて分かった」という言葉が、この記事で一番刺さった部分だ。正社員でいると、会社の評価軸でしか自分を測れなくなる。派遣に転向して市場と直接向き合ったとき、「自分はこれだけの価値がある」という感覚を初めて持てた、という話は、12年間正社員でやってきた人間だからこその気づきだと思うぞ。

派遣施工管理という働き方の現在地と、向いている人間の条件

須藤さんの話を聞いて改めて整理すると、派遣施工管理は「条件さえ合えば正社員より合理的な選択になりうる」働き方だということだ。ただ「誰にでも向いている」わけではない。

1級資格があるかどうかで、派遣の使い勝手がまるで変わる

須藤さんが登録時に2,800円の提示を3,500円に交渉できたのは、1級建築施工管理技士という資格があったからだ。2級と1級では派遣市場での単価が大きく変わる。俺の感覚では、2級資格で経験5年と、1級資格で経験10年では、時給ベースで1,000円以上の差が出るケースが多い。「派遣に転向しようか」と考えているなら、まず1級を取ってから動くのが正解だ。資格は正社員でも派遣でも使えるポータブルな武器で、取得のタイミングは早いほどいい。

この記事の主人公も、最初の一歩は相談からだったぞ。

「勤務地を自分でコントロールしたい」という動機が明確な人間に向いている

須藤さんが派遣を選んだ一番の理由は「自宅から1時間以内の現場を選べる」という構造だった。転勤なし・遠方出張なし・日勤のみ。これらの条件を正社員のまま実現しようとすると、会社交渉か転職しかない。派遣はその条件を入口で指定できる。「勤務地と働き方を自分でコントロールしたい」という動機が明確な人間には、派遣という構造はそのまま武器になる。転勤なし求人の選び方については「もう全国出張は嫌だ…」転勤なし・エリア限定で働ける優良ゼネコンの探し方も参考にしてくれ。

「逃げで選ぶ派遣」と「戦略で選ぶ派遣」では、3年後がまるで違う

須藤さんは「派遣期間中に何を積み上げるか」を最初から意識していた。複数の現場を経験して引き出しを増やす、時給交渉で自分の相場感を把握する、派遣会社との関係を丁寧に作る。こういう動きができているから、3年経っても「次の現場が決まらない」という状況が一度も起きていない。派遣を「正社員に疲れた逃げ場」として選ぶのか、「キャリアの保険として戦略的に使う」のかで、数年後の立ち位置が変わってくるぞ。

まとめ

須藤さんの話を通じて一番伝えたいのは、「派遣=格下げ」という思い込みは、1級資格と経験がある施工管理には当てはまらない、ということだ。案件を選べる、勤務地を指定できる、サービス残業がなくなる。正社員では構造として実現しにくいことが、派遣では入口で保証される。

ただしデメリットも本当にある。ボーナスがない、昇給がない、次の現場への不安がある、退職金がない。須藤さんが正直に話してくれたように、これらは「慣れる」部分と「割り切る」部分が必要だ。メリットだけを見て飛びつくと、後で「こんなはずじゃなかった」になる。

「派遣という選択肢を保険として持っておく」だけでも、今の正社員としての交渉力が変わる。まず派遣会社に登録して「自分の経験と資格だと時給いくらになるか」を知っておくだけでいい。登録は無料で、すぐに働く義務もない。その一歩が、40歳で詰まないためのカードになるぞ。派遣を含めたキャリアの選択肢については施工管理、40歳で詰まないための”保険”としての派遣という選択肢も合わせて読んでくれ。