施工管理から公務員へ。市役所転職で年収は下がったが、30代土木施工管理が後悔しない理由

わたしの履歴書
源さん
源さん

「施工管理から公務員になれるのか」。そういう疑問を持っている施工管理は、意外と多いと思う。
でも実際に転向した人間の話を、ちゃんと聞いたことがあるやつは少ないんじゃないか。
今回は、準大手ゼネコンで土木施工管理を7年やってきた健三さんが、社会人経験者採用枠を使って30代で市役所の土木技術職に転向した話を聞いてきたぞ。
年収がどう変わったか、試験対策をどうやったか、施工管理の経験が役所でどう活きているか。全部正直に話してもらったから、参考にしてくれ。

わたしの履歴書
  • 大学時代
    土木工学専攻
    土木工学を専攻。卒業後は土木施工管理の道へ。
  • 20代前半
    準大手ゼネコン入社
    準大手ゼネコンに新卒入社。道路・河川・橋梁の土木工事現場で施工管理を担当。
  • 20代後半
    1級土木施工管理技士取得
    現場経験を積みながら1級土木施工管理技士を取得。現場代理人も経験。
  • 30代前半
    転向を決意・試験対策開始
    残業・休日出勤の常態化をきっかけに転向を決意。働きながら社会人経験者採用枠の試験対策を開始。
  • 30代半ば
    市役所土木技術職に転向
    社会人経験者採用枠で市役所の土木技術職に合格・入庁。現在は道路・河川の工事発注業務を担当。

自己紹介:準大手ゼネコン土木施工管理7年が、30代で市役所職員になるまで

今回話を聞かせてもらったのは、現在37歳の健三さんだ。大学で土木工学を学び、卒業後は準大手ゼネコンに新卒入社。道路・河川・橋梁といった土木工事の現場監督として7年間勤めてきた。1級土木施工管理技士の資格を持ち、現場代理人として工事全体を任される立場まで経験してきた人間だ。

「ゼネコンの仕事は好きでした。土木の仕事はやりがいがあるし、完成したときの達成感は今でも好きです。ただ、30代に入って子供が生まれてから、このままでいいのかという疑問が強くなっていった」と健三さんは言う。妻と子供1人(保育園児)との生活の中で、繁忙期に月60〜80時間に達する残業と、休日出勤が常態化していた現場の働き方が、転向を考え始めるきっかけになった。

現在は市役所の建設部門で道路・河川の工事発注業務を担当して2年目。「施工管理の経験があってよかった」と感じる場面と、「ゼネコンとはまるで違う仕事だ」と感じる場面の両方があると話してくれた。

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転向のきっかけ:現場の繁忙期が続いて、限界を感じた瞬間

源さん
源さん

転向を考え始めたのは、どんなタイミングだったんですか?

健三さん
健三さん

子供が生まれた年の繁忙期がきっかけでした。
工期が重なって、2ヶ月近く休日出勤が続いた時期があったんです。子供が産まれた直後なのに、妻に全部任せてしまって。「俺はこれを続けていいのか」と本気で思いました。

源さん
源さん

会社に相談することは考えませんでしたか?

健三さん
健三さん

しました。ただ「現場が終わったら改善する」という話が続いて、構造的には変わらなかった。ゼネコンの繁忙は現場の工程に依存しているので、会社に言ってどうにかなる話じゃないとわかってきた。
そこで「転職するなら、働き方の構造が根本的に違う場所がいい」と考えるようになったんです。

源さん
源さん

公務員という選択肢はどうやって出てきたんですか?

健三さん
健三さん

発注者側の仕事に興味を持ったのが最初です。
現場で市役所の担当者と話す機会があって、「発注者として工事を見る仕事もあるんだ」と気づいた。最初は発注者支援業務も調べましたが、「どうせなら公務員として直接発注者になりたい」という気持ちが出てきて、市役所の技術職を調べ始めました。

「発注者として直接関わりたい」という動機は、施工管理の経験があるからこそ出てくる発想だと思う。現場で発注者と向き合ってきた人間は、「あっちの立場から見たらどう見えるのか」という視点を自然に持っている。発注者支援業務という選択肢については発注者支援業務は超ホワイトな働き方?も参考にしてくれ。

社会人経験者採用枠の話:教養試験が免除される仕組みと、働きながらどう対策したか

源さん
源さん

社会人経験者採用枠とは何か、試験の仕組みから教えてもらえますか?

健三さん
健三さん

多くの自治体で設けている採用枠で、一般的な新卒向けの公務員試験とは構成が違います。
一般枠では数的処理・文章理解・社会科学・人文科学・自然科学といった教養試験が課されますが、社会人経験者採用枠ではこの教養試験が免除または簡易化されているケースが多い。代わりに、論文試験・面接・場合によってはプレゼンの比重が高くなります。

源さん
源さん

教養試験が免除されると、対策の仕方はどう変わりましたか?

健三さん
健三さん

勉強の方向性がまるで変わりました。一般枠だと五科目の筆記対策に数百時間かかることもある。社会人経験者枠は論文と面接が中心なので、「自分の7年間の経験をどう言語化するか」という準備が核心になる。
働きながらでも対策しやすいのが、この枠の大きな特徴だと思います。

源さん
源さん

論文と面接の対策は具体的にどうやりましたか?

健三さん
健三さん

論文は「地域のインフラ整備における課題と解決策」というテーマが多いので、自治体の総合計画や建設部門の施策を読み込んで、施工管理の経験と絡めて論じる練習をしました。
面接は「なぜ民間から公務員に転向するのか」という質問への答えを徹底的に磨きました。「現場を知っている技術者として、発注者側から地域のインフラを支えたい」という言い方が、面接官に一番刺さった気がします。

社会人経験者採用枠の大きなメリットは、教養試験という「純粋な暗記・計算力の試験」を免除または簡易化してもらえる点だ。働きながら数的処理の勉強に何百時間も費やすのは、現実的に難しい。論文と面接に集中できる構造は、施工管理の実務経験がある人間に有利に働く。「現場で何をやってきたか」という7年分の経験が、そのまま試験の武器になるんだよな。

なお、社会人経験者採用枠の制度は自治体によって異なる。年齢上限・試験科目・応募要件は各自治体の採用ページで必ず確認してくれ。

年収は正直どう変わったか

源さん
源さん

年収の変化は、転向前に一番気になる部分だと思います。正直に教えてもらえますか?

健三さん
健三さん

下がりました。正直に言います。ゼネコン時代はボーナス込みで年収680万円程度でした。
市役所に入って1年目は、<span class="bold">給与表への号給換算で民間経験が一部反映されましたが、それでも年収は550万円台</span>になりました。130万円近い差が出ました。

源さん
源さん

それでも後悔していない、ということですか?

健三さん
健三さん

後悔はしていないですが、「130万円は大きい」という事実は正直に言いたい。ただ比較するときに数字だけで見ると判断を誤ると思っています。市役所には共済(地方公務員共済組合)の手厚い福利厚生があり、退職金は民間より手厚いケースが多い。
サービス残業がなくなったことで、時間あたりの実質収入で考えると差が縮まる部分もある。トータルで考えると、生活水準は思ったほど下がっていないというのが実感です。

源さん
源さん

住宅ローンや家計への影響はありましたか?

健三さん
健三さん

転向前に家計を見直して、月々の支出を整理しました。
ボーナスに依存した家計設計から、毎月の給与だけで回せる設計に変えた。市役所の給与は年2回のボーナスがありますが、民間ほどの額ではないので、「ボーナスは貯金」という発想に切り替えました。
妻も「残業がなくなって家にいる時間が増えたほうが大事」と言ってくれたので、そこに助けられました。

130万円という差は、数字として重い。ただし「年収の数字」だけで比較すると、公務員の福利厚生・退職金・雇用の安定性という部分が見えなくなる。地方公務員の退職金は、勤続年数によって異なるが、民間中小企業と比較すると手厚いケースが多い。転向を検討するなら、「年収の数字」と「生涯収入・安定性・福利厚生」を合わせて比較することをすすめるぞ。

公務員の施工管理、実際の仕事の流れ

源さん
源さん

市役所の土木技術職は、実際にどんな仕事の流れで動いているんですか?
民間の施工管理とは根本的に立場が違うと思うので、整理して教えてもらえますか?

健三さん
健三さん

大きく分けると「発注前」「発注・契約」「工事監督」「完成後」という流れです。
発注前は、工事の必要性を整理して予算要求をして、設計図書を作るか設計事務所に委託するかを決める。入札を経て施工業者と契約したら、工事監督として現場確認・施工者との協議・書類審査をして、完成検査で仕上げる。その後も書類整理・議会対応・住民対応が続きます。

源さん
源さん

民間の施工管理と一番違う部分はどこですか?

健三さん
健三さん

「自分で工事をつくる」か「工事を発注して管理する」かという根本的な立場の違いです。
民間の施工管理は工事を完成させることが仕事ですが、市役所の技術職は税金を使って工事を発注して、適正に執行されているかを監督する立場です。現場に毎日いるわけじゃなくて、週1〜2回の現場確認と、大量の書類業務が中心になります。

市役所土木技術職の仕事の流れを整理すると以下の通りだ。予算要求・設計委託→入札・契約→工事監督(現場確認・書類審査・施工者との協議)→完成検査→書類整理・議会対応。この流れの中で、施工管理経験がある人間は「工事監督」の部分で特に強みを発揮できる。設計図書と現場の状態を照合する目が、現場経験のある人間とない人間では明らかに違うんだよな。

市役所に入って気づいた、施工管理経験者が強い理由

源さん
源さん

実際に市役所に入って、施工管理の経験が活きていると感じる場面はありますか?

健三さん
健三さん

現場確認のときに一番感じます。施工者が提出してきた施工計画書や品質管理記録を見たとき、「ここの数字はおかしい」「この納まりは現場では無理だ」という判断が、経験がない同僚より早くできる。施工者と話すときも、「現場の言葉」で話せるので信頼されやすい。「あの担当者は現場がわかる」という評価をもらえると、施工者側も問題を早めに相談してくれるようになりますね。

源さん
源さん

施工管理の経験がなくて困っている同僚を見ることはありますか?

健三さん
健三さん

います。新卒で市役所に入った同僚は、施工者から「この工法だと難しい」と言われたとき、判断ができなくて上司に確認するケースが多い。
俺は現場の経験があるので、「この条件ならこの工法で問題ない」という判断がその場でできる。施工者から見ると「話が早い担当者」と「そうじゃない担当者」ははっきり分かれるみたいで、信頼関係が早く築けるかどうかの差が出てきます。

発注者サイドにいた俺の経験とも完全に一致する話だ。「現場を知っている発注者」と「知らない発注者」では、施工者側の対応がまるで変わる。問題が起きたときに早く相談してもらえる発注者は、工事のトラブルを早期に解決できる。その積み重ねが、工期内・予算内・品質基準内での完成につながる。施工管理の経験は、発注者の立場に立ったときに最大の武器になるんだよな。

残業・休日は実際どう変わったか

源さん
源さん

働き方の変化を、具体的に教えてもらえますか?

健三さん
健三さん

残業はゼネコン時代の繁忙期で月60〜80時間だったのが、市役所に入って月10〜20時間程度になりました。
年度末の3月は予算執行の関係で忙しくなりますが、それでもゼネコンの繁忙期とは比べものにならない。休日出勤はほぼなくなりました。土日に仕事のことを考えなくていい、という状態が初めてできたんです。

源さん
源さん

家族との時間はどう変わりましたか?

健三さん
健三さん

子供の保育園の送り迎えができるようになりました。ゼネコン時代は朝早く出て夜遅く帰ってくる生活だったので、平日は子供の顔をほとんど見られなかった。
今は夕方に迎えに行って、夕食を一緒に食べて、寝かしつけをする。当たり前のことが当たり前にできるようになったというのが、一番大きな変化だと思っています。

源さん
源さん

市役所にも繁忙期はあるんですか?

健三さん
健三さん

あります。年度末(2〜3月)は工事の完成検査と書類整理が重なって忙しくなる。予算要求の時期(8〜9月頃)も資料作成が増えます。あとは議会の定例会(年4回)の前後は議員からの質問対応で書類が増える。
ただどれも「スケジュールが読める繁忙」なんです。ゼネコンの繁忙は天候や工程の遅れで突然来るけど、市役所の繁忙は年間スケジュールがほぼ決まっているので、心の準備ができる。これが大きな違いだと思います。

「スケジュールが読める繁忙」という表現が刺さった。施工管理の繁忙期は、天候・資材の遅れ・下請けのトラブルで突然やってくる。対して市役所の繁忙は、年度末・議会・予算要求というサイクルで毎年ほぼ同じタイミングにくる。「いつ忙しくなるかが分かっている」というだけで、生活の設計がまるで変わるんだよな。

市役所技術職に転向する前に知っておくべき3つのデメリット

源さん
源さん

転向前に知っておいてほしいデメリットも、正直に教えてもらえますか?

健三さん
健三さん

3つあります。これは転向を考えているなら、絶対に知った上で判断してほしい部分です。

デメリット①:現場でバリバリやりたい人には向かない

市役所の土木技術職は、基本的にオフィスワーク中心の仕事だ。現場に行く機会はあるが、週1〜2回の確認程度が多く、毎日現場に出て職人と一緒に動くという働き方ではない。「現場の空気が好きだ」「職人と一緒に汗をかく仕事がしたい」という人間には、物足りなさを感じる可能性が高いぞ。

健三さん
健三さん

正直、最初は寂しかったです。ゼネコン時代は毎日現場にいて、コンクリートが打たれる瞬間や、構造物が形になっていく過程をリアルタイムで見ていた。
市役所では完成検査で初めて「ああ、こうなったんだ」という感じになる。現場の達成感の種類がまるで変わりました。

この記事の主人公も、最初の一歩は相談からだったぞ。

デメリット②:細かい事務作業が想像以上に多い

市役所の仕事は事務作業の量が多い。建設物を造るための仕様書・設計図書の確認、各所への書類申請、予算を適正に執行するための計画書作成。これらが日常的な業務になる。さらに自治体によってはIT化が遅れており、手作業での書類処理が残っているケースもある。「施工管理で書類は慣れている」と思っていても、役所特有の書式・手続きの多さに最初は戸惑う人間が多い。

健三さん
健三さん

書類の多さは入ってから気づきました。起案書・決裁書類・議会対応資料・住民説明資料・工事関係書類。全部に押印が必要なものもあって、承認までに時間がかかる。
ゼネコンの施工管理も書類仕事は多いですが、役所の書類は「行政手続き」としての厳密さが求められる部分が違います。最初の半年は書類の作り方を覚えるだけで精一杯でした。

デメリット③:民間より給料が低くなるケースが多い

特に準大手・大手ゼネコンから転向する場合、年収が下がるケースが大半だ。地方公務員の給与は給与表に基づいて決まり、民間経験は号給換算で一部反映されるが、換算率は民間の給与水準より低くなることが多い。ボーナスはあるが、好業績の民間企業のボーナスには届かない自治体がほとんどだ。

健三さん
健三さん

これは覚悟して転向しました。ただ「年収が下がる」と「生活水準が下がる」は必ずしもイコールじゃない。サービス残業がなくなって時間ができた分、副業(資格取得・技術系の相談対応)で補っている部分もあります。
あとは地方公務員共済の福利厚生・退職金の水準を含めると、生涯収入で見たときの差は思ったより小さいかもしれません。ただ「転向直後に年収が下がる」という事実は、家族と数字を共有した上で決断してほしいと思います。

この3つのデメリットは、転向前に必ず知っておいてほしい部分だ。「残業が減る・休日が増える」というメリットだけを見て飛びつくと、「こんなはずじゃなかった」になるリスクがある。健三さんが正直に話してくれたように、デメリットを理解した上で「それでもこの働き方を選ぶ」という判断ができると、転向後の満足度が変わってくるぞ。

市役所技術職に向いている施工管理の条件

健三さんの話を踏まえて、「どんな施工管理が市役所技術職に向いているか」を整理しておくぞ。

まず「勤務地を固定したい」「転勤なしで地元に根を張りたい」という人間には、市区町村の技術職は構造的に合っている。市区町村の職員は原則として管轄区域内での勤務になるため、転勤のリスクがほぼない。Uターンして地元自治体の職員になるというキャリアパスは、地方在住の施工管理経験者には現実的な選択肢だぞ。

次に「発注者の立場で地域のインフラに関わりたい」という動機が明確な人間に向いている。市役所の土木技術職は、税金を使って地域の道路・河川・橋梁を整備する仕事だ。「自分が発注した工事が地域に残る」という実感は、施工管理とはまた違うやりがいになる。健三さんが言っていた「現場を知っている発注者になりたかった」という動機は、この仕事と非常に相性が良いぞ。

一方で「バリバリ現場に出たい」「年収を上げ続けたい」「成果に応じて給与を上げたい」という人間には向いていない可能性が高い。地方公務員の給与は年功序列の要素が強く、成果主義的な報酬体系とは構造が違う。今の会社で年収を上げ続けたいなら、別のキャリアパスを検討したほうがいいぞ。勝ち組転職先の比較については施工管理の勝ち組転職先3選も参考にしてくれ。

社会人経験者採用枠を使って転向を検討するなら、まず気になる自治体の採用ページを確認することから始めてくれ。年齢上限・試験科目・応募要件は自治体によって大きく異なるため、「自分が応募できるか」を先に確認した上で動くことが重要だ。発注者支援業務という別の選択肢も気になるなら発注者支援に強い企業ランキング9選も合わせて読んでくれ。

まとめ

健三さんの話を通じて伝えたいのは、「施工管理の経験は公務員でも確実に武器になる」ということだ。現場を知っている発注者は、施工者からの信頼が早い。設計図書と現場の整合性を自分で判断できる技術者は、書類だけで判断するしかない担当者より問題解決が早い。7年間の施工管理経験は、市役所という場所でもそのまま活きる。

ただしデメリットも本当にある。年収が下がる・現場に出る機会が減る・事務作業が想像以上に多い。この3つは転向前に必ず理解しておいてほしい部分だ。「残業がなくなる・休日が増える」というメリットだけを見て飛びつくと、後で「こんなはずじゃなかった」になるリスクがある。健三さんのように「デメリットを理解した上で、それでもこの働き方を選ぶ」という判断が、転向後の満足度を決めるぞ。

「施工管理から公務員への転向」は、転職市場では情報が少ない選択肢だ。まず気になる自治体の社会人経験者採用枠の情報を調べて、「自分が応募できる条件か」を確認することから始めてくれ。論文と面接が中心の試験なら、7年間の施工管理経験がそのまま試験の武器になる。その一歩が、「現場を知っている発注者になる」というキャリアへの入口だぞ。