
数億円規模の工事現場をゼネコンの施工管理として走り抜けてきた健太さん(29歳)。現場の達成感も苦労もすべて糧にして、今は採用代行会社で土木業界の課題解決に挑んでいるんだ。「現場経験があるからこそ、見えてくる業界の未来がある」と語る健太さん。キャリアチェンジを考えている人にとって、きっとヒントが見つかるインタビューになっているぞ!
Q.簡単に自己紹介をお願いできますか?
新卒で大手ゼネコンに入社。約6年施工管理に携わってきました。元請け業者として数億円規模の大きな工事を担当していました。
現職では、主に土木関連の企業様の採用代行会社に勤めています。人手不足な企業様が新たに人を雇用するための求人票の作成や求人媒体の選定、面接日程の調整サポート、面接率、採用率を上げるためのアドバイスなどを行っています。
Q.新卒で施工管理のお仕事を選ばれたのは、どんな理由からですか?
最大のきっかけは、2011年の東日本大震災です。当時中学3年生だった私にとって非常にショッキングな出来事であったとともにインフラの重要性を身に染みて感じさせるものでもありました。
これまで当たり前のように使っていた道路も水道も電気も、多くの人が少しずつ整備してきたものだと認識するようになり、いつしか私自身も土木業界に携わってみたいという気持ちが芽生えていました。
中でもゼネコンを選んだ理由は、インフラ整備の最も近いところで仕事ができるし、特に大手ともなると大規模な事業が多く日本の基盤を支えているんだというやりがいをもって働くことができるのではないかと考えたからです。
Q.具体的にどのようなプロジェクトや業務を担当していましたか?
ゼネコン時代は火力発電所のリニューアル工事現場に配属されていました。何百人という作業員さんたちが入っているとてつもなく大きい現場で、その中でも護岸工事の施工管理を担当していました。
日々の工程管理、品質管理、予算管理、作業員さんたちの安全管理を行い、円滑に工事が進むよう書類作成から現場監督まで幅広い業務をこなしていました。
同現場で別の施設を施工している担当員とも連携を取りながら現場全体が遅れることなく管理することも重要な仕事の一つでした。私が関わった方々は情熱的な方が多く、時にはぶつかりながらも大きな仕事を成し遂げたいという気持ちを皆が持っており非常にいいチームだったと今でも感じています。
Q.施工管理のお仕事で、一番楽しかったこと、やりがいを感じた瞬間は?
一番やりがいを感じたのは、護岸工事が重要な工事だと分かったうえで所長からお前に任せると言われた時でした。火力発電所は蒸気を冷やすために大量の水が必要なので、海の近くに建てられることが多いのですが、私がいた現場ももれなく海岸沿いでした。
つまり護岸工事は現場全てを波や浸食から守るために非常に重要なのです。そのことを所長にいわれた時は全身からやる気がみなぎってきました。無事護岸工事が終わったときは、達成感と安心感、何よりこんな大きな工事を無事終わらせることができたという自信を手に入れることができました。
逆に一番大変だったのは、作業員さんとのコミュニケーションです。発注者の急な計画変更や予算や工期の関係上、作業員さん達に無茶なお願いをすることになってしまう時があり、その都度お叱りを受けていました。もどかしい気持ちもありましたが、管理者とはいえ作業をお願いする立場なので、最大限の誠意で対応することで徐々に打ち解けていくことができました。
業務外で食事会や飲み会を開催することで、それぞれの人となりを知ることができ、仕事にも上手くつながったという経験もありました。
Q.施工管理から転職を考えたきっかけは、どんなことでしたか?
転職を考えたきっかけは大きく分けて2つあります。1つは仕事面、もう一つはプライベート面です。
仕事面に関しては、土木業界に携わっている中で常に人手不足を感じており、少しでもそれを解決できないかと考えるようになったのが発端です。毎月60時間を超える残業、土曜日出勤は当たり前という労働環境であり、この状況を少しでも改善するにはより多くの人に土木業界に挑戦してもらわないといけないのではないかという思いが常にありました。
そこで、土木業界での経験を活かして、私だからこそ伝えられる魅力や困難さを発信し、一人でも多くの人が土木の仕事に就くお手伝いができればという気持ちで現在の採用代行会社へ転職しました。もう一つのプライベート面に関しては、結婚に伴うライフステージの変化がきっかけです。
残業、休日出勤については個人的にもかなりしんどさを感じていました。若さかつ、独身という体力的、時間的なアドバンテージのおかげで乗り越えられてはいましたが、結婚を機に家族の時間がもっと欲しいと思うようになりました。もちろん家族を支えるための収入も大事ですが、そのために家族との時間を犠牲にしたり、体を壊したりしては本末転倒のため、このタイミングでの転職を決意しました。
他にも、私が勤めていた会社は全国転勤の可能性があったことも大きな理由の一つです。妻の妊娠、出産、子育てのことを考えると、一つの地域に根差して勤務できたほうが良いということを妻と話し合いました。
Q.現在のお仕事は、どのような内容ですか?施工管理の経験は、今のお仕事にどう活きていますか?
現職では、主にインフラ関連の企業様が新たに人員を募集する際のお手伝いをしています。具体的な流れとしては、下記のとおりです。
- どのような人材が欲しいか、ターゲットの選定
- 新卒や既卒、経験年数、年齢、経験した工種や資格の有無などを細かく打ち合わせし、企業にマッチする人材を具体的に絞り込んでいきます。
- 求人票の作成
- ターゲットに基づき、求人票を作成します。現社員へのインタビューを交えながら、企業の魅力がしっかり伝わる内容に仕上げます。自身の土木職の経験を活かし、リアルな魅力や苦労を反映させることで、求職者に共感してもらえる求人票作りを心がけています。
- 求人方法の選定
- 有効求人倍率などを参考にしながら、求人メディア、転職エージェント、地元求人誌、リファラル採用など、最も効果的でコストを抑えた採用方法を検討します。
- 応募者対応、面接対応のアドバイス
- 応募者からの連絡には迅速に対応することが重要です。求人が多い現在の状況では、対応の遅れが応募者を失う原因になりかねません。丁寧でスピーディーな対応を徹底するよう、企業の人事担当者へアドバイスを行います。
このような流れで、数多くの企業様の採用をサポートし少しでも土木業界の人手不足が解消されるよう尽力しているところです。私自身が土木出身だからこそ、企業人事担当者様ともスムーズにやり取りができており、非常にやりがいのある仕事です。
実際に私が担当した企業様に新しく入社した方の話を聞いてみると、「魅力や大変なところが分かりやすく求人票に書かれており、挑戦してみたいと思った」というありがたい言葉をいただいたこともあります。
Q.現役で頑張っている施工管理の皆さんに、何かアドバイスはありますか?
いつも皆さんが頑張ってくれているからこそ、日本国民全員が便利な生活を送ることができています。本当にありがとうございます。加速する少子高齢化によってまだまだ人手不足で厳しい仕事だと思いますが、間違いなく現代に欠かせない非常に重要な仕事です。自分の仕事に誇りを持って少しでも長く土木の仕事を続けてほしいと願っています。
ただ、一言で土木と言っても幅広い業務や工種があります。発注者や受注者など立場によってやりがいも魅力も変わってくると思うので、自分の適性や興味のある分野へのキャリアアップはどんどんしていくべきだと思います。
例えば、設計や積算、書類作成など事務的な仕事にも携わりたいという方であれば、公務員土木職という道もありますし、やはり体を動かしながら多くの人とかかわりながら働きたいという方にはディベロッパーという選択肢もあります。自分が土木の仕事の中の何に興味があるかを今一度考えて、今後のキャリアを積み上げていってください。

この記事は、施工管理という仕事のリアルな経験談と、そこから派生したキャリアの新しい可能性を非常にわかりやすく伝えていて、読み応えがある内容だね。施工管理の厳しさとやりがいを実感しながら、さらにその経験を活かして業界の未来に貢献しようという視点が強く伝わってくるよ。
特に印象的なのは、東日本大震災をきっかけに土木業界に関心を持ち、その後のキャリアの中で「業界の人手不足を解消したい」という使命感を持ったことだね。土木業界に関わる者として、このような視点を持って転職先を選んでいることには共感する人も多いんじゃないかな。
現職での採用代行業務では、土木出身者ならではのリアルな視点を活かして求人票の作成や採用プロセスを支援している点が素晴らしい。実際に「魅力や大変さが伝わった」という声を求職者からもらっているエピソードから、この仕事が業界全体にポジティブな影響を与えていることが伝わる。
また、「自分のキャリアをどう広げていくか」というアドバイスが的確で、多様な選択肢があることを伝えているのも良いね。特に発注者や受注者、事務職や現場職といった具体的なキャリアパスの提案は、今後の道に迷っている人にとって非常に参考になる。
施工管理の経験を活かして業界全体に貢献するという姿勢や、現役の施工管理者に向けた感謝とエールは、同じ業界にいる人々に勇気を与える内容だと思うよ。読んでいて、自分もこの仕事をもっと頑張りたい、または新たな可能性を模索してみたいという気持ちになれる記事だった。