
施工管理から設計の仕事に移った人間の話を聞いてきたぞ。
今回は、水道・下水道工事の現場監督を8年間やってきて、設計コンサルタントに転向した松田さんに話を聞いた。「現場を知っている人間が設計をやると何が変わるのか」という話が、この記事の核心だ。
転職の動機も、現場での苦労も、設計に移ってから気づいたことも、全部正直に話してもらったぞ。
自己紹介:水道・下水道の現場監督8年から、設計コンサルタントへ
今回話を聞かせてもらったのは、現在39歳の松田さんだ。大学で土木工学を専攻して、新卒で水道・下水道工事の施工管理に就いた。
現場監督として8年間、水道管や下水道管の布設工事を中心に、工事の受注から地元への周知、施工計画、現場管理、最終検査までの全工程を担ってきた人間だ。
「父が道路工事の現場監督をしていて、子供の頃から現場の話をよく聞いていました。父が担当した新しい道路を一緒に見に行ったときの感動が、今でも鮮明に残っています。大学で土木工学を選んだのも、その記憶が原点にあります」と松田さんは振り返る。
現場監督という仕事への入口に、父親の背中があったというのは、土木系の人間には珍しくない話だ。
8年間の現場経験を経て30歳のとき転職を決断し、現在は水道・下水道の設計コンサルタントとして設計図面や積算業務を担当している。「現場を知っている人間が設計をやると、何かが変わる」という確信が転職の背景にあった。
- 大学時代土木工学を専攻父が道路工事の現場監督だった影響を受け、土木工学の道へ。施工管理の仕事を志す。
- 大学卒業後水道・下水道工事の施工管理に就く水道管・下水道管の布設工事を中心に、工事の受注から地元への周知、施工計画、現場管理、最終検査まで全工程を担当。
- 30歳水道・下水道の設計コンサルタントに転職設計と現場のギャップを現場で目の当たりにして転向を決断。新規管路設計・布設替え設計・耐震化工事の設計を担当。
- 現在(39歳)設計コンサルタントとして在籍現場経験を活かした実用的な設計図書の作成と、行政機関・顧客への技術的アドバイスを担う。
転職のきっかけ:現場で気づいた「設計と現場のギャップ」が転機になった

転職を考えたのはどんなタイミングだったんですか?

ある水道管の布設替え工事を担当していたときです。
現場に入ってみると、設計図面と現場の状況が合っていない部分が次々と出てきた。地下埋設物の位置が図面と違う、現場の地形が想定と異なる。その度に発注者と協議して対応策を練るんですが、「これは設計段階で現場を知っている人間が関わっていれば防げた話だ」と強く感じました。

設計と現場のギャップは、よくある話なんですか?

水道・下水道の工事では特に起きやすいです。
地下の工事なので、掘ってみないと分からないことが多い。それ自体は仕方ない部分もあるんですが、「現場経験のある人間が設計していれば、この工法は選ばなかっただろう」という判断ミスは確実にあった。
そこに気づいたとき、「自分が設計側に回れば、現場の負担を減らせる」と思いました。

設計の仕事への憧れもあったんですか?

正直に言うと、ありました。8年間現場をやってきて、「設計という仕事がどういうものか、自分でやってみたい」という気持ちは以前からあった。
ただそれだけだったら踏み切れなかったと思います。「現場経験を活かして設計の質を上げられる」という確信が重なったことで、転職を決意できました。
「掘ってみないと分からない」が前提の地下工事で、設計と現場のギャップをゼロにすることはできない。 ただ「現場を知っている人間が設計していれば防げた」というミスは確実に存在する。松田さんがその事実を現場で目の当たりにして、自分が設計側に回ることを決めたのは、筋の通った判断だと俺は思うぞ。
父が現場監督だった子供が、土木の道に進んで8年間感じたこと

8年間の現場監督で、一番やりがいを感じた瞬間はどんなときでしたか?

数ヶ月から長いと数年かかる工事が完成したときです。
その間に厳しい天候の中での作業があって、予期せぬ地下埋設物の発見があって、住民からのクレームに対応して。それを全部チームで乗り越えて、インフラが完成したときの達成感は何ものにも代えがたい。
父が担当した道路を見に行ったときの感動と、どこか重なる感覚がありました。

逆に、一番きつかった部分はどこでしたか?

安全管理のプレッシャーです。交通量の多い道路での作業や重機を使った工事は、常に危険と隣り合わせで、一瞬の油断が大事故につながる。実際に同僚が現場で大きな事故に遭ったこともあって、そのときは本当に怖かった。
毎朝の安全ミーティングを徹底していても、それでも「今日も全員無事に終わってくれ」という緊張感は8年間ずっとありました。

父親が現場監督だったことは、仕事に影響しましたか?

影響していると思います。子供の頃から「現場監督の仕事がどれだけ大変か」「でもどれだけやりがいがあるか」を聞いて育ってきた。
だから現場でしんどいことがあっても、「これが仕事だ」という腹の括り方ができていた部分はあると思います。
父が現場で積み上げてきたものを、俺も積み上げているんだという感覚がどこかにありました。
「父が担当した道路を見に行ったときの感動」と「自分が完成させたインフラの達成感」が重なる、という話が印象に残った。
現場監督という仕事の重さを、家族の背中から学んできた人間だからこその感覚だと思う。その積み重ねがあったから、8年間やり切れたんだよな。
現場監督が設計コンサルタントに転向して、最初に驚いたこと

設計コンサルタントに転向して、最初に感じたギャップはありましたか?

仕事の「時間軸」が全然違うことに驚きました。現場は毎日目の前の問題を解決しながら動く仕事です。でも設計は、数ヶ月後・数年後に施工される工事のことを今考える仕事。最初はその感覚に慣れるまで時間がかかりました。

設計の知識という面では苦労しましたか?

CADの操作や積算の細かいルールは、入社後に一から覚えました。
ただ「現場でどう施工するか」をイメージしながら設計できるのは、最初から強みとして発揮できた。同僚に「この工法は現場でこういう問題が起きやすい」と説明できる場面が多くて、そこは現場経験が直接活きていると感じます。
「時間軸が全然違う」という話は、現場から設計に移った人間が必ず通る話だと思う。現場は今日の問題を今日解決する仕事。設計は今日の判断が数年後の現場に影響する仕事。その感覚の切り替えに時間がかかるのは自然なことだ。
ただ松田さんのように「現場でどう施工するかをイメージできる」という強みは、その切り替えが終わったあとに一番活きてくるぞ。
水道・下水道の設計コンサルタント、現場出身者の1日の動き

今の仕事の具体的な内容と、1日の流れを教えてもらえますか。

新規の水道管路や下水道管路の設計、既設管路の布設替え設計、耐震化工事の設計が主な業務です。
見積り作成から始まり、受注後は現地調査、計画立案、CADを使った設計図作成、数量計算書作成、設計書作成、納品まで一連の流れを担当しています。

1日の流れとしては、午前中はCAD作業や設計書の作成が中心です。
午後は現地調査に出ることもあれば、行政機関や顧客との打ち合わせが入ることもある。現場監督のときと比べると、自分でスケジュールをコントロールできる部分が増えました。毎朝の安全ミーティングから始まって現場に出ずっぱりだった生活とは、1日の構造がまるで違います。
「毎朝の安全ミーティングから始まって現場に出ずっぱり」という生活から、「自分でスケジュールをコントロールできる」仕事への変化。
これは体力的な負担だけでなく、家族との時間の使い方にも直結する話だ。現場監督時代に夕方事務所に戻ってから書類作業に追われていた生活が、設計に転向することでどう変わるかは、現場で消耗している人間には具体的にイメージしてほしい話だぞ。
「設計だけの人」には出せない提案が、現場経験者にはできる理由

設計コンサルタントとして、現場経験が一番活きていると感じる場面はどこですか?

設計図を引くときに「この工法だと現場でこういう問題が起きる」というイメージが自然に浮かぶことです。
設計段階でそのリスクを潰しておけば、現場での手戻りが減る。現場を経験していない設計者は、そのイメージが持ちにくい。「なぜこの工法にしないのか」を現場の言葉で説明できるのは、施工管理出身者の強みだと思っています。

顧客や行政機関とのやり取りでも、経験は活きていますか?

活きています。行政の担当者から現場の状況について質問が来たとき、設計の立場から現場の実態を正確に伝えられる。
「この工法だと施工時にこういう問題が起きる可能性があります」という具体的なアドバイスができるので、信頼してもらえていると感じます。現場を知らない人間には、この説明はできないと思います。

転向してよかったと感じる瞬間はどんなときですか?

自分が設計した管路が実際に施工されているのを見たときです。
現場監督のときは「誰かが引いた図面を施工する」立場でしたが、今は「自分が引いた図面が現場になる」。その感覚は施工管理とは違うやりがいがあります。特に現場監督が「この設計は施工しやすい」と言ってくれたときは、転向して正解だったと実感します。
「現場監督が『施工しやすい』と言ってくれた」という話が一番響いた。設計者として最高の評価は、現場からの「この図面は使いやすい」という言葉だと思う。
それを言えるのは、設計者が現場を知っているからだ。松田さんが8年間現場で積み上げてきたものが、設計という形で現場に還元されているってやつだな。
インフラ老朽化時代に、現場経験のある設計者が求められる背景

松田さんの話を聞いて改めて感じたのは、水道・下水道という分野は「現場経験のある設計者が圧倒的に不足している」という構造的な問題を抱えているということだ。
老朽化インフラの更新ラッシュが、設計コンサルへの需要を押し上げている
高度経済成長期に整備された水道管や下水道管の多くが、更新時期を迎えている。厚生労働省の資料によると、水道管の法定耐用年数は40年だが、全国の水道管のうち法定耐用年数を超えた管路の割合は年々増加している。
これは俺の感覚ではなく、行政が公表しているデータだ。この更新需要が、設計コンサルタントへの発注量を底上げしている構造になっている。「仕事がなくなるリスクが低い」という点では、水道・下水道分野の設計コンサルは安定性が高いフィールドだぞ。
現場経験のある設計者は、業界内で希少な存在だ
設計コンサルタントには、大学で土木を学んでそのまま設計の仕事に就いた人間が多い。現場監督を経験してから設計に転向する人間は、業界全体で見るとまだ少数派だ。
松田さんが話していた「現場でどう施工するかをイメージしながら設計できる」という強みは、設計だけのキャリアを歩んできた人間には持ちにくいものだ。発注者サイドにいた俺の実感としても、現場出身の設計者が引いた図面は、現場との齟齬が起きにくい。その違いは、実際に工事が始まってから如実に出てくる。
施工管理から設計コンサルへの転向で、準備しておくべきこと
松田さんが「CADの操作や積算のルールは入社後に一から覚えた」と話していたように、設計コンサルには現場経験だけでカバーできない部分がある。
CADの基本操作、設計基準の理解、積算の考え方。これらは転職前に完璧に仕上げる必要はないが、「何を学ぶ必要があるか」を把握しておくと入社後のスタートが変わる。施工管理から設計コンサルを含むキャリアチェンジの選択肢については、施工管理から建設コンサルへ!コンサル未経験でも転職はできる?も参考にしてくれ。
まとめ
松田さんの話で一番印象に残ったのは、転職の動機が「現場への不満」ではなかったことだ。設計と現場のギャップを現場で目の当たりにして、「自分が設計側に回れば、現場の負担を減らせる」という確信を持って動いた。だから転向後に、現場経験を設計の武器として使いこなせている。
「現場監督が『施工しやすい』と言ってくれた」という言葉が、このキャリアチェンジの正解を表していると思う。8年間現場で積み上げてきた経験が、設計という形で現場に還元されている。施工管理の経験は、現場を離れた後のほうが価値が見えやすくなる、という話がここでも当てはまるぞ。
「設計に興味はあるけど、現場経験しかない自分には無理かもしれない」と思っている人間には、松田さんの話は参考になるはずだ。
現場経験は設計コンサルへの転向において弱みではなく、むしろ希少な強みになる。自分のキャリアの次のステップを考えるなら、RSG建設転職の評判を発注者側が語る。施工管理からの転職に使えるのかも参考にしてくれ。




